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花屋開業のサポート事例~まず最初に~

公開日:2021年04月09日 / 最終更新日:2021年07月12日

著者:根津大介(税理士)

花屋

 

起業を思い立ってから開業し、軌道に乗るまで、未経験の方は何が起こるのか想像もつかないと思います。
そこで開業をしたクライアントを例に、起業を思い立ってから開業するまでのストーリーをまとめてみました。

今回紹介するのはお花屋さんの事例ですが、起業を決めてから実際にどう動けばいいのか、どんな手順で進めていけばいいのか、きっと参考になるはずです。ご自身の事業に置きかえて、イメージしながら読み進めていただければと思います。

 

ファーストコンタクト

その方との出会いは、交流会で知り合った人からの紹介でした。花屋を開業したく相談にのって欲しいという依頼でした。私は本人に連絡し、詳細をお聞きしたいので近くの喫茶店で会う約束をしました。

基本的に、最初のコンタクトでは面談することにしています。その人の雰囲気、空気感、癖、印象、性格などは、実際にお会いして話さないと計れないと思っているからです。そうすることで、メールや電話などの言葉からその奥にある本意を察することができると思っています。

その方はとても花が好きで、花屋がやりたい想いが全面に溢れている、情熱を持った40代の男性でした。情熱がすごすぎて、お店が閉店になるくらいまで話をしていたと思います。ここでは、花男くんと呼ぶことにします。

花男くんの話では、彼が勤めていた会社は他に事業を行っており、そちらがメインで花屋は副事業のようでした。そのため花男くんが花の仕入れから、集客、販売まで一人で行っていました。その花屋の事業はうまくいっていなかったため半年後には閉店することが決定していたようです。

そんな中で花男くんは、他の花屋に再就職することを選ばず、自分で花屋を開店することを決めたとのこと。ただ何をどこから手を付けていいのかわからないので、専門家に相談にのって欲しかったそうです。

 

状況の把握と整理

花男くんの話を整理すると、こんな感じです。

・今の花屋の営業は半年後には店がなくなり失業する
・再就職せずに花屋を開店する
・花屋の経験は長いし花屋としてのセンスには自信があるし定評もある
・開店準備資金はほとんどない
・花屋をやること以外は場所も店舗も何も決まっていない。

花男くんはとても花が好きで、最初に会った時も熱を持って話をしてくれました。ただ前述の通り資金がない、具体的計画もない、開店の期限も間近ということもあり、早急に全てを決めていかなければなりませんでした。

起業される理由、条件、環境などは人それぞれだと思いますが、花男くんのように具体的に何も決まっていないことは、多くの方が少なからず当てはまる部分があるのではないでしょうか。

そこでまず最初にやるべきは、専門家、経験者など俯瞰してあなたの事業を捉え、意見や提案をしてくれる人に相談し、状況を整理してもらうことです。そして今あなたがやるべきこと、足りないこと、必要としていること、課題などを洗い出すことが大切です。

 

事業を日常に落とし込む

私は花男くんにまず、「生活費はいくらかかって、いくら稼がなければいけないかを考えて欲しい」と伝えました。さらに、その稼がなければいけない金額がでたら、その金額が最低利益になるように簡単な事業計画を立ててほしいと申し上げました。

花男くんは花屋の経験が長く、実際に店舗運営も行っていたことから、事業計画の作成についてはスムーズに書き出すことができました。

花男くんは私を気に入ってくれたのか、それとも彼の話を聞いたことが嬉しかったのか、何か思いついたときやわからないことがあったらすぐに連絡をくれました。

そして疑問・質問や話ししたいことを話尽くし、満足して連絡を切るということが幾度となく続いていました。まさに小学生の子供がワクワクして母親に今日の出来事を話すがごとく、楽しそうに毎回連絡してきました。

花男くんは何かある度に報告してきましたが、この行動はとても大事です。
夢見る少年花男くんとそれを見守り俯瞰してみてくれる専門家とで情報を共有し、判断材料を共有することで、花男くんが大事にしていること、やりたいこと、価値観が見えてきます。その共通の土台の上で、専門家が判断したこと、提案したことに花男くんは納得してくれます。

この時花男くんとの連絡手段は電話かLINEでしたが、Chatworkもおすすめです。電話やLINE(掲載期限がある)は記録として残らないですし、メールは他のメールと混在してしまい、必要な内容が探しづらくなってしまいます。

スマホ、タブレット、パソコンなど使用機器も問わない上、書類の添付や保管もできるので使い勝手がいいです。起業の記録を残しておくことは後にも役に立ちます。

 

事業計画書の作成

事業計画書と聞くと、専門家が作成する難しいものと思っている方が多いと思います。

確かに金融機関に提出する事業計画書は専門性が高く、かなり詳細に書く必要があります。事業計画書を書いたことがない方が書けるわけがありません。

ですが、だからといって専門家の方に書いてもらうことは、起業しようとしている方には意味がないので止めたほうが良いと思います。大事なのは、事業を始める方が事業をイメージしながら自ら書くことです。

なぜか?それは開業する前から、事業計画書を書きながら事業のシュミュレーションができ、実際に今何が必要なのか、何が足りないのか、何をやらなければいけないのか課題がイメージできるからです。様々なイメージをしながら事業計画書を書いていれば、花男くんのように疑問・質問が出てきて、ワクワクが止まらくなるのは必然ですね。

実際に事業計画書を書く際に何から始めるのかと言いますと、まずは最低限稼がなければいけない生活資金を算出します。その後は経費です。

花男くんのように事業経験があれば、かかりそうな経費を洗い出すのは簡単だと思います。ただ、それでも足りない部分があるかもしれませんので、そこは経験のある経験者か専門家にアドバイスを貰ったほうが良いかと思います。

花男くんはどこでどんな店舗でやるか全く決まっていませんでしたが、基本的な構成は一緒です。規模と立地によって人件費や家賃の金額が増減するだけなので、ここでは事業者がイメージする規模と立地を仮定して算出していきます。花男くんにも仮定で算出してもらいました。

経費が出来上がると、生活資金 + 経費 = 1月に必要な売上高総利益となります。あとは業種によって売上総利益率はだいたい定まっておりますので、その率を割り返せば1月の稼がなければならない売上高が算出されます。

花男くんの例で実際の金額を当てはめると、生活資金は毎月40万円必要で、経費は50万円。花屋の原価率は約40%だということでしたので、これを計算式に当てはめると下記のようになります。

(400,000円 + 500,000円) ÷ 60% = 1,500,000円

1月に必要な売上高は1,500,000と算出されました。

次に考えていただくのは、この150万円稼ぐためにどのように売上を積み上げていくかです。

店舗での売上に加えて、レッスン、レストランなどの店舗用・会社のオフィスなどの事務所用・個人の家庭用の定期購入など、売上を上げるためのアイデアを出してもらい、それぞれのアイデアに実際の金額を当てはめていきます。

そして、その売上に無理がないかどうかを精査していきます。もし無理があるようでしたら、経費や生活資金が削減できないかを精査します。

そんなことを何度か繰り返していきながら、実情に合わせてより具体的に、実現性の高い事業計画書を作り上げていきます。ここで大事なことは言葉と数字の融合です。

事業計画書で稼ぐ数字、その数字を実現するための行動計画を具体的に書き出し、より実現性の高いものに仕上げていきます。そうすることで行動しやすくなりますし、数字で表されているので修正もしやすくなります。実現性の高いものに仕上げれば、成功へのプロセスが見えてきます。

さらに、想像もしていないコロナのような事象が起きても、この事業計画書に立ち戻り数字と行動を作り直していくことで、ピンチの中でもどう行動するべきかが見えてきます。

花男くんから、開店した後売上が思った以上に上がってこないと相談を受けた際には、最初の事業計画書に立ち返り、作成時に言っていたことはやっているか、やり方は合っているのか、結果が出ていないのは何が原因かを探りました。その結果、やるべきことが見えてきたので、実際に行動し、当初の計画も実現し始めました。

 

事業計画書のその先は

ここまで、起業すると決めた時にまずすべきことを、花男くんを例に話してきました。

次回からは数回に分けて、開業までに出てきた課題をどうクリアしていったかを、紹介していきたいと思います。

ちなみに花男くん、こんな何も決まっていない花屋の開業を前にして、彼女を作り、結婚まで決めてしまいました。色んな意味でワクワクが止まらない花男くんです。

続きはこちら
→店舗開業までのストーリー ~事業のコンセプト~

 

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