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公開日:2021年10月12日 / 最終更新日:2022年06月15日
著者:根津大介(税理士)
税理士にお願いするタイミングについて疑問に思う方は多いと思います。
税理士の立場から言うと、起業・独立・開業をしようと考えたタイミングで相談に来てほしいです。
ただ、これはこちら側の願望だと思います。
身近に気軽に聞ける税理士がいれば別ですが、私でも最初は自分でなんとかしようと考えると思います。
ただ、そのように初めた事業はある一定のところで税理士にお願いしよう、お願いしなければならない、お願いしたほうが良いと考えることがあると思います。
そこで、私が今まで初めて関与することになったクライアントが税理士にお願いするきっかけについて聞いた理由をまとめました。
さらに、私がクライアントから、税理士と契約していて良かったと言われたことも加えてお話したいと思います。
目次
売上や規模が大きくなれば申告書の作成が増えたり、経営者がやらなければならないことが増えてくるので、税理士にお願いしないといけないと考えるようです。
その規模とは具体的に売上であれば1,000万円を超えるぐらいの規模、従業員でいうと5人以上です。
売上が1,000万円を超える規模になると消費税が課税されることになります。
消費税の集計には手間がかかり、計算も難しいので税務知識のない方では消費税の申告書の作成は無理に近いと思います。
また、消費税には原則課税と簡易課税の選択ができ、どちらを選択するかで消費税額が大きく変わる可能性があるので、その点においてもちゃんと比較検討ができる専門家に任せないと税金の支払いが大きく変わってきます。
消費税に関しては今後インボイス制度が始まれば売上に関わらず、取引業者の要請などで課税業者になる必要性が出てくるため税理士との契約が必要になるかもしれません。
法人であれば1人から個人事業者であれば5人以上の社員を雇うと社会保険の加入義務が発生します。
社会保険の加入義務が発生した段階から労務に関わる業務が増えるため経営者の業務が多忙となり、専門家の手助けやアドバイスが必要となるようです。
開業当初はとにかく事業を安定させようと事業に専念されていると思います。
ただ、事業が安定してくるとそれに比例して事業者のやることが増え、経理処理も増えていきます。
気がつけばいつの間にか仕事量が自分のキャパを超えて、処理できずに申告期限ギリギリまで書類整理もされないまま放置されてしまいます。そして、自分自身ではどうすることもできないと感じて、慌てて税理士を探し、資料の整理も何もできない状態で「こんな状態ですが宜しくお願いします」と資料をそのまま持ってこられる方がちょくちょくいらっしゃいます。
このような状態では時間の余裕がないので、自分にあった税理士を探す余裕がなく、税理士の選択肢の幅も狭くなり、後に後悔することになる可能性があります。
さらに、節税は前準備が必要な事が多いので、申告の直前にお願いされる場合には余分な税金を支払う可能性が高くなります。
そうならないために余裕を持って税理士を選択する時間を持って頂きたいと思います。
理想としては開業当初から売上、利益、作業量などの基準を決め、その基準まで事業運営ができたら、税理士にお願いすると決めておくことをお勧めします。
実際に今クライアントとなっている経営者から「生活資金が稼げるようになってからお願いします」と言われ、開業から5年後に顧問契約を結ばせて頂いたクライアントもいらっしゃいます。
私の経験の中で税理士に頼もうと思ったきっかけが「周りから言われたから」ということが一番多いです。
紹介が多いというのが理由の一つですが、事業主自身よりも周りの方のほうが冷静にみて状況がわかるのも理由としてはあるのかもしれません。
私としてはこのきっかけが一番良い状況で顧問することができます。
上記で申し上げた自分のキャパを超える方とは違い、申告期限まで時間があるので余裕を持って状況を把握することができ、今後の話も余裕を持ってできるので事業主にとっても資金繰りや節税などメリットは大きいと思います。
同業者、事業仲間、家族などに相談して、冷静な目で見てくれた人からのアドバイスで契約のタイミングを図るというのも一つの判断基準だと思います。
事業が大きくなってきたから、取引上の必要性からなど様々な理由から法人化を考えている方がいらっしゃいます。
その法人化のタイミングで税理士にお願いしたいと税理士を探す方が多くいらっしゃいます。
確定申告は税理士にお願いしなくても作成はできますし、税務署も教えてくれます。
しかし、法人税の申告書となると簡単に教えられるものでもなく、専門家でなければ税務申告書を作成することはできないと思います。
そのため税務署に相談に行っても事業仲間や同業者に相談したとしても法人になるのであれば税理士にお願いすることを前提に話をされると思います。
よく独立開業された方から「こんなに税金を支払うの?」と言われることがあります。
会社員時代は税金等が引かれた手取り額しか気にしたことがない方がほとんどで、実際にどのぐらいの税金を毎月支払っているかわからない方が多いと思います。
しかし、個人事業主は収入を得て、その翌年の確定申告書提出後に1年分をまとめて税金を支払うので、多く支払っていると感じてしまう方が多いです。
そのため会社員時代のときと同じように給料で説明するとそんなものかと言われる方が多いです。
ただ、税理士にお願いしていない事業主の方は理由がわからないためこんなに税金を支払うものなのか、自分だけ多く支払っているのではないか、税金の支払いをもっと少なくできないか、節税の方法を教えてほしいなどの理由から税理士にお願いしようと相談に来られる方が多くいらっしゃいます。
このように考えてしまう最大の要因は資金計画ができていないことだと思います。前述したように1年分をまとめて翌年に税金を支払う事は資金の計画を立てていないと、手に納税資金がないという状態になる可能性が高くなります。
その点でいうと税理士は事前に節税対策をしてくれたり、納税準備をするように前もって指摘してもらえますし、1年間の納税の流れを説明してくれますので、資金繰りが突然悪くなるという可能性は低くなると思います。
規模の小さい個人事業主のところに税務調査が入る可能性はないと思っている方が多くいらっしゃいますが、そうでもありません。
確かに確率は低いかもしれませんが、0ではありませんし、税理士と契約をしていない個人事業主は様々な理由で税務調査の対象になることが多々あります。
税務調査に合った方の殆どの方がもう二度と経験をしたくないと仰っております。当然です。
ほぼ税務職員の言いなりですから。事業主は税法を知っているわけでもなく、何となく確定申告書を作成している方が殆どだと思います。
そんな方達が税務職員というだけで気後れしているのに、その税務職員から指摘を受ければ反論なんてできませんよね。
状況にもよりますが、税務調査は2日間行われ、その間税務職員から良いように言われ、何も反論できずに、注意を受け、追徴課税されれば、もう二度と経験はしたくないと思います。
また、指摘や指導したことがちゃんとできているかという確認の意味合いから1度税務調査が入ると数年内に再調査が来る確率は高いです。特に消費税の課税業者はより調査対象となりやすいと思います。
経営者には経営者にしかできないことがあります。そうであるならば苦手なことに時間を割くのはもったいないと思います。
苦手なことには苦手意識があり、後回しにしたり、時間がかかりすぎることがあります。
そんな時間があれば経営者の得意分野に時間を使い、その苦手な事は専門家に任せたほうが効率的だと思います。
そして、その専門家にかかる費用は経営者が得意分野に時間を向けて稼げば済むことです。
実際に、経理が苦手で専門的なことがわからないから税理士と契約すると考えている事業主は、前述のようにその分稼ぐと仰っています。
経営者は孤独であると言われます。もちろん周りに誰もいないわけではありません。
家族、友人、事業仲間、従業員など様々な人達が周りにはいらっしゃいます。
ただ、会社の内部まで相談ができる人は少ないと思われます。
ある経営者は家族や従業員に会社内部の話をして、不安を与えたくない。またある経営者は事業仲間に表面的な経営の相談はできますが、会社内部の数字までは打ち明けられない。
その他様々な理由から周りの方に相談できず、孤独になってしまうのかもしれません。
私はある経営者から「こんな内情を話しできるのは先生だけだよ」と言われたことがあります。
その言葉を聞いたときには嬉しくもあり、自分の立場の重要性も感じました。
税理士は会社の数字はもちろん従業員や家族のことなど、会社や社長に関わる全てのことに携わる必要があるため、大抵のことは把握してます。だから会社の経営、従業員、相続など様々な場面で相談相手に適していると思います。
会社の経営では様々な課題が訪れます。その課題を経営者だけで解決することはできるかもしれませんが、相談者がいることでとても心強く感じると思います。
今回、コロナの影響を受けた事業主の方が応援金、支援金、給付金など国や地方公共団体からの支援を受けられたと思います。
ただ、その申請に当たり、様々な書類が必要となり、その書類は税理士と契約されている事業主であれば、税理士に頼めば簡単に用意してくれる資料ですが、契約していない事業主の方は何を用意すればわからず提出を諦めてしまう方や、たとえ苦労して書類の提出ができたとしても書類の不備等で返却され、指摘事項が理解できず、そのまま諦めてしまう方も多くいらっしゃったようです。
政府が求めてくる書類は事業をやっていれば必ず資料としてあるものなので、さほど難しいことを言っているわけではありませんし、不正受給防止の観点からも書類の提出は必要なことだと思います。
今回のコロナに限らず、補助金を申請する際や金融機関からの借入を申請する際にもそれなりの書類が必要となります。
そのためそのような申請の際は相談を受ける機会が多く、その時は提出要件等を直に見せて頂き、必要書類を把握して、こちらが準備することが多いです。不慣れな方は普段使われない言葉が並べてあるので、理解するのに時間や手間がかかるようです。
これまで、税理士を必要としたとき、税理士がいて良かったと思われたときの実例を述べさせて頂きました。
この事を参考に税理士と契約するきっかけの参考にして頂きたいと思います。
私の見解としては、本業としてその事業で生活をしていくと思われたのであれば、最初から税理士と契約されることをお勧めします。
なぜなら、ある程度自分で確定申告をされて、様々な理由で私のところに顧問契約を申し込まれた方の殆どの方が大小の差はありますが、税金の支払いを抑えることができたからです。
たぶん、それは殆どの税理士が普通に経理処理・確定申告をすればできることだと思います。
簿記をご存じの方でも損益計算書は作成できたとしても貸借対照表の作成はできません。
また、会計ソフトを使ったとしても正確な貸借対照表はできないと思います。
それは経験不足による仕組みの理解ができないからだと思います。
ただ、その時点で貸借対照表の作成が適用要件となっている青色申告特別控除(55万円若しくは65万円)が使えませんので、その分税金を多く支払うことになります。さらに、減価償却や繰延資産の概念も難しいため、その分の経費も漏れる可能性は高いです。
また、事業を初めた当初は多くの支払いを行っておりますが、その全てを経費に計上しておらず、漏れていることも多々あります。
その後の支払いも確証のないまま経費として計上していたり、しなかったりすると思います。
私は「この支払が経費となる」ということを申し上げるだけでなく、このように支払いを行って頂ければ経費になりますと事前に経費の理解をしてもらうようにしております。
これだけでも税金の支払いを抑えることはできると思います。
特に消費税が絡んでくるとその金額はもっと多くなります。
もしかしたら最初から税理士と契約していれば、その顧問料分の節税効果は得られたかもしれないと思うことがあります。
税理士と契約すれば資金が減りますし、その分の効果が得られるか不安に思うかもしれません。
ただ、本気で事業を長く行っていきたいと考えるのであれば、早めに自分に合った税理士を探して、相談することをお勧めします。それなりの効果は得られると思います。
当事務所ではスポット相談(無料)を行なっておりますので、「専門家の意見が聞きたい」という方はお気軽にご相談ください。