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開業支援の失敗事例 〜情報共有の大切さ〜

公開日:2021年09月14日 / 最終更新日:2021年10月04日

著者:根津大介(税理士)

報・連・相で経験の浅さと視野の狭さを補う

 

新入社員を経験された方は上司か先輩から「ホウ・レン・ソウ」をしっかりするようにと指導を受けたことがあると思います。私も新入社員時代に言われたことがあります。その当時は部下を管理するための指導だと思っておりました。

経験を重ね、後輩や部下を持ち、指導する立場になって、とても重要な事に気付かされます。

「ホウ・レン・ソウ」は部下の管理のためという面もありますが、経験の浅さから来る視野の狭さを情報を共有することで、上司や先輩の経験を提供することができ、仕事がスムーズに進んだり、間違いに気付いたり、新入社員の成長に役立つ事になります。

「ホウ・レン・ソウ」は経験の浅さからくる視野の狭さを補ってくれる重要な行為だと思います。新入社員に限ったことではありません。これから起業・開業しようとしている起業家も未知の領域に足を踏み入れようとしております。そのため新入社員と状況は一緒だと思います。

以前、開業間もない経営者の支援を2年ほどさせていただきましたが、私の中では情報の共有ができず、不本意に終わった経験があります。その経験の話をさせていただきます。

 

今やるべきことを明確にしないと前に進めない

 

友人から新しく会社を起こして、テナントに飲食店を出店するため、その開業に手を貸してくれないかと依頼を受け、快く引き受けました。

その経営者は長年飲食店の運営の経験があり、新店舗の開店や責任者も務めており、店舗運営についてはとても能力のある方でした。店舗の運営における能力、知識、経験、人脈、発想力はとても高いレベルでしたが、企業の経営については全く経験はありませんでした。そのため何となくは認識していたものの店舗運営以外のやるべきことや必要な資金の流れについては全くわかりませんでした。だから私に最初に依頼してきたことが、会社の1年間の流れを説明して欲しいという事でした。

顧問契約を結ぶ時に面談させて頂き、事業計画、コンセプト、経営理念、今後の企業の展望などを話ししていただきました。私もこちらから提供できるサービスの説明をし、月に一度面談をすることを約束しました。
開店してから1年間は店舗と商品の認知度が低いため売上はあまり伸ばすことはできませんでした。社長は他にも仕事をしており、なかなか新店に時間を割く事ができなかったこともあり、アイデアはありながらもそのアイデアが実行に移せない事も原因としてありました。

ただ、忙しい中でも毎月面談はさせて頂いており、店舗や社長の状況を把握することができたため、問題点や改善点を認識することができました。忙しい社長の時間や手間をかけなくても税務申告や財務分析ができ、いざ時間が取れ、売上拡大ができる状態になった時に業務処理が障害とならないように業務の省力化・効率化、経理の自動化などを進めていく提案をしました。

しかし、もともと経理や業務処理を社長が苦手としていたため、私の提案も前向きに取り組めず、忙しさも相まって、後回しとなっておりました。

さらに忙しさのあまり面談する時間も取れなくなってきたため、苦手な部分ではあるがどこまでであればできるのか、苦手な部分を社長ができないのであれば誰かに任せることはできないのか、今の処理方法を簡略化できる方法がないのかなど改善策や提案するための情報共有ができなくなってしまいました。

 

面談で重視している2つのこと

私が大切にしているのが面談です。その面談も業務報告であったり、会議のような硬いものではなく、日常会話のような感じです。色々な方と多くの時間を使って面談させて頂いた経験から言いますと、本音の部分は心が打ち解けた最後の方に現れます。私もそうなのですが、日本人は話下手の方が多いようで、なかなか最初から芯の話をしてくれません。だから面談の終わり近くに「実は・・・・」ととても重要な話を始めます。

面談には2つの作用があると思ってます。

1つは当事者が話をすることで当事者自身が情報整理をしたり、冷静になることができるということです。誰かに話をするということは相手に理解してもらうために頭の中で情報を整理する必要があり、その作業が頭を整理する行為となります。それと自分の考えを声にすることで、行動したこと、判断したことの理由が自分に帰ってきます。つまり声に出すことで、自分の言動の再認識に繋がるのです。

もう一つが情報の共有です。

同じ情報を得たとしても経験の違いから判断が異なることはよくあると思います。最終的な判断は経営者が行うことですが、選択肢や判断材料は多いほうが良いと思います。選択の幅を拡げるためには様々な経験が必要だと思います。

だから多くの企業を見てきた経験を持つコンサルタントや税理士の経験が必要になると思います。ただ、その経験を活かすためには情報が必要になります。外的要因から社内で何が起きているのか、それに対してどう思い、どう対処しているのか、そして今後どうしようと考えているのか。さらに前回の面談で考えたことが今回の面談までにどう活かされてきたのか。企業によって問題とするところは異なりますので、情報の共有なしに経営判断の提案はできないと思います。

そして、節税にも繋がります。事業の経費は購入した物やサービス自体がどうかなのではなく、その物やサービスの目的が大事なのです。だから、経営者が同じ物やサービスを購入したとしても経費になるかどうかはその経営者の行為、行動、目的によって変わります。そのため経営者の経験から判断してしまうと見落としてしまうこともあります。それを補うために税理士が経営者の行為、行動、目的を聞いて想像や予想をして本人から確認を取ります。そこで面談が必要となります。

経営者は万能である必要はないと思いますし、全ての業務をこなす必要もないと思います。一番すべきことは決断することだと私は思います

だから苦手なものをやってくださいと言う気はありません。

ただやらなければいけないことがあるので、如何にその苦手でもやらなければいけない事をこなしていくかを考えていく必要があります。その方法や手段などは私の中にいくつかあるのですが、そのどれがこの会社や経営者に合うのかは本人と協議しなければ提案できません。その情報共有となる面談の時間がとれなければこちらではどうすることもできません。社長もそのことは理解はしているとは思うのですが、苦手意識からか目の前の仕事を優先させてしまっていましたので、情報の共有ができず提案や改善する材料を収集することができませんでした。

 

不測の事態

こちらからの提案も進まず、改善策も話し合われないまま初めての決算を迎えることになりました。そんな状況なので経理処理はできておらず、決算直前にバタバタしながらも決算処理をなんとか無事に終えることができました。

そんな状況ですから業績は悪く、1年前と比べても何の進展もみられませんでした。さすがに社長も危機感を感じ、心機一転、来期の展望とやるべきこと、実行することを決め、来期の目標を設定し、その目標を達成することを固く誓いました。ただ、これからという時にコロナの影響を受けてしまいました。

いつも忙しくバタバタしていた社長がコロナの影響で休業を余儀なくされてからは時間を埋めることができないようでした。ただ、そんな中でも危機感とやらなければいけないという意志だけは強く持っておりました。

時間の余裕もあり面談も毎月行われ、社長が考えていること、やろうとしていること、リアルな店舗の状況など情報の共有が図れておりました。そんな面談を重ねることで、情報の整理ができたり、今やることが明確になったり、今後の店舗運営についてどうしていくべきかということも定まってきたと思います。

私はこんな状況だからこそ今やることをこなし、状況が改善した時にすぐに飛躍できるような準備をしていくことを提案し続けました。ただ、当事者となる社長にとってみれば悠長に準備などしている場合ではなく、今すぐどうにかしなければいけないという思いが強く、動かなければいけないという気持ちが先行してしまったようです。この業界が長いという経験からチャンスとなりそうな情報は色んなところから入ってくるし、コロナ禍でもなんとかできるという経験的な勘が働き、色んなものに手を出しておりました。

忙しくしているほうが気が紛れるというのもあるのでしょう、そのうちこちらから連絡しても返事も返ってこず、面談する時間も取れないほど忙しくなってしまいました。

 

情報の共有ができないと

みなさんも、忙しく時間に追われてしまうと冷静な判断ができなくなってしまったり、視野が狭くなりどうでもいいことにこだわってしまったり、立ち止まって考える時間が必要なのに立ち止まる勇気が持てず自ら忙しくしてしまうという経験があるのではないでしょうか。

当事者は一生懸命なので悪気はないかもしれませんが、

企業経営にとっては一つの判断が命取りになる可能性がありますので、冷静な目はとても大事です。

ただ、当事者となると情熱と冷静さを併せ持つことは難しいので、第三者の目が必要となると思います。第三者の協力を得るために重要となるのが情報の共有です。

社長との情報の共有が図れない状態となっても周りから入ってくる情報から判断すると気の焦りと不安からくる衝動が感じられました。

そうなると自分自身では止められないと思いますし、周りの方も声をかけづらくなってしまい、孤立していってしまいます。

本来であれば冷静にさせるために、注意をしたり、意見に反することを言う役目は税理士だったりします。

そんな時間も与えてもらえないまま時間だけが経過していきました。面談ができるように時間や場所を自由に設定できるような提案もしましたが、衝動が抑えられず、時間を作ることができませんでした。みなさんもご存知のようにコロナの影響は長引き未だに続いている状態です。情報の共有が図れないのであればこちらとしては打つ手はありません。改善の提案も注意も指導も本質がわからなければ提言することはできません。

最終的に私は面談する時間が取れずに提案することができないのであれば、顧問料という経費だけが嵩んでいくので、今は経費を削減することに注力したほうが良いと判断し、顧問契約の解除を提案しました。

 

教訓として自分の糧に

私はコンサルタントにとって何が大事かと考えた時にやはり結果が全てだと思います。

それは立てた数値目標が達成したか否かではなく、数値目標を達成するために社長自身が行動できたか否かだということです。行動して数値目標が達成しなければ、行動の方法が間違っていたということがわかり、次への行動が明確になってくるからです。

企業経営は常に変化していく経済の波の中でどう行動していくかだと思います。だから数値目標達成、未達成は一時的な通過点であり、数値自体が重要なのではなく、そこに至る行動がどうであったのかが重要だと思ってます。

今回の社長とのやり取りの中で、コロナという不測の事態が起きた影響があるのかもしれませんが、長い企業経営の中で不測の事態が起きるのは当然のことです。その波の中でどう対処し行動していくのかが重要となります。

今でも社長とのやり取りを振り返ることがあります。もっとやれることがあったのではないか、こうしたら良かったのではないかなど後悔ということではなく、今後も様々な社長と様々な状況を乗り越えていかなければならないので、今後の私自身のあり方であったり、立ち位置や経営者との距離感など経営者にとってどうあるべきかなど、今回のことはとても良い教訓となりました。

 

失敗のない起業をするために、顧問は使い倒す

コンサルタントや税理士など専門家を顧問として契約しているのであれば、ぜひ使い倒して下さい。

飾っておいても意味がありませんから。

専門家のアドバイスが欲しいと言われるのであれば、情報を提供し、質問などを投げかけてみて下さい。人によるかもしれませんが、クライアントから投げかけないとアドバイスや提案は出てこない事が多いです。その道の経験が豊富であったり、賢い経営者はアドバイスなしでも事が進んでいくので、あまり情報の共有や相談をされない傾向にあります。

今までの経験から気になることや疑問に思ったことをすぐに聞いてくる方のほうがあまり相談せずに自分で解決して進めていく方より成長や進展が早いように感じます。

自分で考えて解決することは大切ですが、自分の考えとは違う考えや情報を入れることで、考えの幅が拡がるし、その人達の経験を自分のものにできると思います。

視野を狭めないため、選択肢や判断材料を増やすためにも情報を共有し、面談の時間を割くようにすることをお勧めします。

 

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