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公開日:2021年01月22日 / 最終更新日:2021年02月01日
著者:根津大介(税理士)
税理士は基本的に税務申告書を作ってくれる人です。皆さん勉強熱心ですし、税理士会では勉強を義務付けているので、税務申告書を作成するのに知識の差はあまりありません。
ただ、経験は別です。経験がないことによって起きる間違いや不利益は多々あります。税理士が関わる領域は多岐にわたるので、全ての事象に対応できる税理士はあまりいないと思います。
だからといって大きな事務所が良いかといえば、そうとも限りません。会社組織となれば効率を考えるため、専門的なことに細分化され、一人の人が全てを対処することはないかもしれません。
税理士選びで必要なことは、税理士に何を求めているかを明確にすることです。ただ、漠然としている方がほとんどだと思うので、自分に合った税理士の選び方のポイントについて説明していきたいと思います。
ただし、全ての経営者の方にこのような税理士が良いということはできません。そのため今回は、税理士を求めているあなたの状況を限定してご紹介したいと思います。
「なぜ、税理士選びにおいて経営者の状況を限定してしまうのか?」
多種多様な事業形態、経営者のスキル、経営経験、事業歴など、クライアントとなる方の状況は千差万別です。そのすべてにおいて対応できる税理士事務所はほぼ皆無だと思います。
あなたの事業の状態に合わせて税理士を選ぶことをおすすめします。また極端な話、事業の成長とともに税理士事務所を変えていくべきだと考えています。
では、実際に選び方、税理士を選ぶための判断ポイントを以下に挙げていきます。あなたの状況が下記に当てはまれば、読み進めていただきたいと思います。
目次
開業間もない頃はやることがたくさんあるため、税理士事務所の業務も多くなり、クライアントにかかる時間は長くなります。事業規模が小さければ顧問料も多くは取れませんので、業務の時間がかかることから嫌がる税理士事務所もあります。
それでも、開業支援を掲げている税理士事務所は多くあります。規模が小さくとも、その市場が大きく、開拓しやすく、今後成長する事業者が多く存在すると考えているからです。
ただ先ほども述べたように、開業間もない頃は、経営者の経営・会計・税務の知識が少ないため教える手間がかかります。そのため、独立・開業支援の経験が少ない税理士事務所は、教えることを二の次にし、業務を進めることを優先させて、何の説明もないまま進んでいってしまうことも少なくありません。その結果、突然税金の支払いを言われてしまい、資金繰りで慌てることなどもよくあることだと思います。
支援経験の豊富な税理士事務所では、必要な話や手助けを適材適所でしていただけます。リスクを前をもって説明してくれるので気構えができますし、事前に対処もできます。開業間もない頃の資金繰りは、経営において一番重要なことです。
加えて、税金の支払いが資金繰りに大きな影響を与えることをわかっているので、事前に説明します。
支援経験の豊富な税理士事務所は、経営を理解し、経営経験の少ない方には事前に想定できないと理解しているからこそ、今後何があるかを事前に説明し、経営におけるリスクの回避や対処法を指導していきます。
最近の税理士業界では、税理士の老齢化や競争の激化に伴って、合併などにより事務所が大型化している傾向があります。大型化しているもう一つの理由は、昨今の会社経営の多様化に対応するため、様々な業務を遂行しなければならないことも挙げられます。
ですので、ホームページなどではコンサルティング業務を行ったり、他士業と連携を取っているなど、様々なバックアップができると掲載している事務所が多いと思います。
そのような大きな事務所に任せておけば何でも対応してくれると思われるかもしれませんが、そうとは限りません。「大きな事務所なら大抵の事には対応できる」というのは間違いではありませんが、経営経験や知識があり、会社経営のビジョンをハッキリと持ち、説明できる経営者でないと、なかなか上手くいきません。
「経営経験や知識があり、会社経営のビジョンをハッキリと持ち、説明できる」ことを前提として、経営に関するアドバイスや提案、人材の紹介をしていくことになります。そのためその前提がなければ、アドバイスや提案、紹介を上手く活用することができず、宝の持ち腐れとなってしまいます。
経営の知識が少なく、様々なことを一から学ばなければならない状況であれば、親身になってくれる税理士事務所の方が満足が得られやすいと思います。ですので、所長税理士が指導や相談に乗ってくれる事務所が良いと思います。経験や知識はもちろんのこと、経営規模の小さいうちは何が起きるかわかりません。様々な状況に臨機応変に対応できるのは、税理士事務所の経営者である所長税理士だけです。
経営知識の少ない方は、経営におけるリスク管理の知識も乏しいです。乏しいということは、リスクヘッジや危機回避することができないことに等しいと思います。
そのため、状況に合わせて提案や相談に乗ってもらえる環境が必要となります。具体的には、いつでも相談できるツール及び相談できる環境です。
事業経営が軌道に乗る前は、様々な障害が発生します。未知の障害に対して、経営者は経験がなくとも決断をしなければなりません。経験のない事象に対峙した際に必要となるのは、いつでも対応してくれる良き相談者だと思います。
もちろん、税理士事務所には営業時間があり、24時間365日対応できるところはないと思います。ただその限られた時間の中でも、親身になってくれる税理士事務所であれば、時間外でも臨機応変にメール対応していただけることもあります。
態度や言葉遣いで相談しやすい雰囲気作りをされている税理士は、経営者が困ったときや相談したいときの一番の理解者にならなければならないと理解しているから、そのように接しているのだと思います。
また、相談しやすさで言うと、定期的な面談があるとなお良いです。会って話をすることで、何気ない雑談の中から経営のヒントや気づきを得られることが多々あります。経営知識のない方は「何を相談すればよいのかわからない」と言われますが、そんな方は特に、面談で質問・疑問を引き出してもらえることが多いのでおすすめです。
説明上手と言っても、饒舌に話ができる人というわけではありません。この税務の業界は、難しい言葉が多く使われます。その難しい言葉を、分かりやすい平易な言葉で説明してくれることが大事だと思います。
いくら饒舌に話をされてその場でわかったような気になっても、理解できていなければ行動に移せませんのでうまく結果がでません。だからこそ、経営者が理解できる言葉で話ができること、理解できているか気にかけてくれるかどうかが重要です。
さらに、専門知識や専門用語に無知な経営者が質問や相談をする場合は、内容を的確に説明することはできないと思います。そんな不慣れな経営者の説明を理解しようと、しっかりと話を聞いてくれたり、理解できるまで何度でも話をしてくれる税理士が、説明上手な方であると思います。
経営者が理解して行動できることが大事だと考えている税理士なら、説明して理解してもらう間、経営者が理解してもらおうと話をしている時間を、無駄だとは感じないはずです。
税務・会計を行う上で、事業や業種に精通しているのとしていないのとでは、判断材料や会計処理が異なります。
あまり考えたことがないかもしれませんが、事業・業種によって経費計上できるものが異なることがあります。そのため、その事業の特殊性を考えながら、税理士は会計処理を行っていきます。
もしその業種に精通していなければ、特殊事情を考慮せずに処理してしまい、余分な税金を支払ってしまったり、財務諸表にうまく反映されないことになります。そして、その財務諸表から経営判断をしてしまうと、間違った経営をしてしまうことにもなりかねません。
経営の相談にのったりアドバイスをするときに税理士に必要とされる能力は、想像力に長けていることだと思います。
何度かお伝えしていますが、経営は何が起きるかわかりません。いつどんな時に起こるかわからない危機に備えるため、想像力を働かせて、危機・リスクを想定して判断していく必要があります。
危機・リスクを想定することで、危機を回避できる、もしくは危機に対する気構えができます。その想像力を働かせるうえで大事となるのが業種・業態の知識と経験が備わっているかどうかです。
上記の判断材料は、税理士事務所の選別に必要な要件ではありますが、個人によって程度の差があると思います。程度の差とは例えば、5つの判断材料のうち、1つ目は強く望むけれど5つ目はあまり望まないというように人によって異なるということです。それが、税理士選別におけるフィーリングだと思います。
この5つの材料を質問して話をすることで、経営者自身が感じることがあると思います。話をする中でこの税理士であれば良いと思えるのであれば、その税理士とのフィーリングが合うということです。