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FC・店舗経営者が知っておきたい「インボイス制度」の基本や仕組み

公開日:2022年04月01日 / 最終更新日:2022年07月14日

著者:根津大介(税理士)

インボイス制度とはどんな制度? 何が変わるの? 実際に私達は何をするの?といった質問を最近よく聞かれます。

先日もクライアントから、「消費税の免税業者でありながら適格請求書発行事業者(登録事業者)のための申請が必要ですか?」という質問を受けました。

情報だけが先行して、どんな事業者が、どのように活用し、どうしなければならないのか、わかりづらくなっているようです。

そこで、情報を整理し、何が必要なのかをここでお伝えしていきたいと思います。

 

まず、あなたは消費税を納める必要のある課税事業者ですか?
もし消費税を納める必要のない免税事業者であれば、インボイス制度を活用しませんので、これ以上読み進める必要はありません。

 

ただし、免税事業者はインボイス制度が始まってからは消費税を徴収することができなくなりますので注意して下さい。領収書、レシート、請求書等に消費税額の記載ができなくなります。

 

そもそもインボイス制度はなんのために始めるのか?と言われますと「取引の正確な消費税額と消費税率を把握すること」が目的です。

まずはインボイス制度の始まりから制度の内容を見ていきたいと思います。

 

インボイス制度とは?

インボイス制度の目的「取引の正確な消費税額と消費税率を把握すること」とはどういう事か?

インボイス制度を始める経緯から話したいと思います。

 

消費税率が8%と10%の複数税率になったことが、インボイス制度と深く関わっています。

複数税率が導入される前は消費税は8%(その前は5%、その前は3%)だけでしたので、商品・サービスの内容を見極める必要がなく、消費税がかかるか否かだけで消費税額の計算が可能でした。

ですが複数税率の導入により、どの商品・サービスが8%なのか10%なのか、これらの内容を判別する必要が出てきました。

 

そこで領収書や請求書を発行する事業者に、商品・サービスに合致した消費税の記載をしたものを発行してもらうことにしました。

消費税が正しく記載された請求書や領収書をもとに消費税額の計算をすることで、適正な消費税額の納税ができるようになります。

つまり、インボイス制度は8%・10%の消費税の適正な徴収を図っていくことを目的として導入されました。

 

また、以前より問題になっておりました免税事業者による消費税の益税問題の解決にも役立っています。

インボイス制度は課税事業者と免税事業者を登録制度により明確に区分することで、免税事業者は消費税を徴収することができなくなります。

 

インボイス制度が始まる前は、免税事業者、課税事業者を問わず全ての事業者が消費税を徴収していました。免税事業者は消費税を納める義務がないため、消費者などから受け取った消費税はその事業者の利益となってしまい、これは不公平ではないかと指摘されていました。

 

インボイス制度が始まってからは、免税事業者は請求書や領収書に消費税を記載することができなくなります。

つまり同じ商品を買うにしても、課税事業者から買うのと免税事業者から買うのとでは消費税の分だけ金額が異なるようになります。

 

免税事業者と課税事業者を明確に区分するために課税事業者には事前に登録の申請が必要で、この申請登録が完了すると、登録番号が付与されます。

この事業者を適格請求書発行事業者(登録事業者)と言います。

そして適格請求書発行事業者が適正な方法で発行される請求書・領収書等を適格請求書(インボイス)と言います。

登録番号が付与されると会社名等がHPに掲載されるため、適格請求書発行事業者か否かが確認できるようになります。

 

インボイス制度が始まったらはどうすればいいの?

2023年10月より始まるインボイス制度とは

<売手側>

売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。

<買手側>

買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。

*国税庁のホームページ「インボイス制度の概要」⇒ 

 

上記のように、インボイス制度においてやるべきことはその立場から大きく分けて2つです。売手側の処理と買手側の処理です。

それぞれの立場から説明をしていきたいと思います。

 

売手側の事業者は何をすればいいの?

消費税を納める義務のある課税事業者だからといって、何もしなければインボイス制度を活用することはできません。

事前に国税庁に申請登録を行い、登録事業者となることで、適格請求書(インボイス)を発行することができます。

そのためまずは登録のための申請を行って下さい。

2,023年(令和5年)10月より制度が始まりますので、同年の3月31日までに申請登録を行って下さい。

*国税庁の案内「お問い合わせの多いご質問」⇒

 

申請登録が完了すると登録番号が付与されますので、その番号を請求書や領収書に記載していくことになります。

インボイスとは売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。

具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。

*国税庁のホームページ「インボイス制度の概要」⇒ 

 

では実際にどのように作成するのか?

簡単に言いますと、今まで発行していた請求書や領収書に登録番号、消費税率と税額を印字することになります。

店舗運営をされている方であれば、レジを使用されていると思います。

インボイスに対応しているレジであれば必要な記載事項は自動で記載されると思いますので、確認してみて下さい。

具体的な記載方法はこちらを参考にして下さい。

日本税理士会連合会のホームページ「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」⇒ 

 

買手側の事業者は何をすればいいの?

売手側から発行された適格請求書(インボイス)を元に消費税額の納税額を計算し、その書類を保管する必要があります。

 

消費税は、簡単に言うと以下の計算式で計算します。

売上などの収入に対する消費税(預かった消費税額)ー 仕入や経費などの支出に対する消費税(支払った消費税額)= 税務署に納める消費税額

 

上記の計算式の「仕入や経費などの支出に対する消費税」を算出するためにインボイスが必要となります。

もしインボイスがなければ控除が認められないため、多額の消費税を納めることになります。これは紛失等でインボイスがない場合も同様なので、必ず保管しておいて下さい。

さらに適正に記載されたインボイスでなければならないため、インボイスを受領した際に、適正に記載されたインボイスであることを確認して下さい。

 

FC事業にとってのインボイス

FC事業者にとってのインボイスは、自営で行われている方とはちょっと異なってきますので、少しFC事業者の方のインボイスについて説明させて頂きます。

 

最初に免税事業者はインボイス制度を活用しないので気にする必要はないと述べましたが、FC事業者は事業者の意思によらず、本部の意向が優先されると思います。

つまり、免税事業者であったとしても課税事業者となり、インボイス制度の導入を勧めてくると思われます。

 

最初に多少触れさせて頂きましたが、免税事業者は今後、消費税を徴収できなくなるため、課税事業者と免税事業者とでは価格の差異が生じてしまいます。例えば、Aのコンビニでは110円で売られている商品が、Bのコンビニでは100円で売られているということです。

FC展開を考えたときに同じ業態、同じサービスで価格が異なる設定はしないと思います。それは利用者のためであり、システムの問題でもあります。

 

FC事業者と本部との関係はあくまで独立した関係ですので、本部からインボイス制度の導入を強制することは難しいと思いますが、本部の看板を背負っている以上、同一の価格とサービスは必要なことだと思いますので、免税事業者の方は課税事業者となれば、経理処理が忙殺になるため、十分に本部の方と話をして決めて頂きたいと思います。

 

インボイス制度の基本まとめ

2023年10月より始まるインボイス制度について簡単にまとめてみました。

重要なことは、インボイス制度により免税事業者は消費税を徴収できず、課税事業者だけが消費税を徴収できると、明確に区分したことだと思います。

登録制になるため、課税事業者は登録の失念だけは十分注意して下さい。

 

インボイス制度は聞き慣れない言葉で、複雑に書いているようなところもありますが、登録・記載方法・保管だけ気にしていれば大丈夫です。

店舗運営をされている方は、レジがインボイスに対応していれば正しい領収書等の発行が自動でされますので、今まで通りの対応をしていただければ問題ないと思います。

 

インボイス制度は日本で初めて導入される制度なので、理解してもらうために簡略して説明させていただきました(インボイス制度の導入の猶予、簡易課税などは省きました)。

まずはインボイス制度の基本的な内容や仕組みを理解していただきたいと思います。

 

制度の導入までまだ期間がありますが、早いうちに検討と準備を進めることをおすすめします。
お困りの際はご相談ください。